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これぞ「官僚の中の官僚」の判決…沖田国賠訴訟

「不当判決だ!」

法廷に響く叫び声。最高裁で差し戻しされたにも関わらず
結論は変わりませんでした。

顔を紅潮させた沖田さんは判決後
「もう一回やれって言うんだ、もう一回やりますよ」
と声を絞り出すように話してくれました。

本日、沖田国賠訴訟の差し戻し審判決がありました。

「本件控訴を棄却する」

いつまで経ってもこの国の裁判は変わりません。

沖田国賠訴訟
1999年9月帰宅途中の沖田さんがJR中央線の電車内で携帯電話で話している女性を注意した。約10分後、電車を降り国立駅から自宅に向かって歩いているところをその女性が「痴漢をした」と訴え逮捕された事件。

沖田さんはそのまま21日間勾留されるが、女性が検事の取調べをすっぽかしたりして結局、不起訴に終わった。

しかし02年4月、納得できない沖田さんは痴漢をやってないのにもかかわらず、犯人扱いされ逮捕勾留されたと国、都、女性を相手取り損害賠償を求めた。

1,2審では痴漢はあったとされ、沖田さんの訴えを却下。しかし去年11月最高裁は国、都に対する訴えは却下したものの、女性に対しては審理を尽くしてないとし、高裁に差し戻した。

この事件、女性は腰に股間を押し付けられたとしているが、沖田さんのほうが女性より10センチも身長が低く、犯行は不可能と弁護団は主張。

他に女性の携帯電話の話し相手と女性の証言も食い違っている。
<女性の証言>
女性:変な人が近づいてきた
女性:離れてよ
沖田:電車の中で携帯電話は止めなさい
女性:変なことしておいて何言っているんですか
沖田:電車の中で携帯電話は止めなさい
女性:分かったわよ。切るわよ。

<話し相手の証言>
女性:変な人が近づいてきた
沖田:電車の中で携帯電話は止めなさい。

携帯電話の話し相手は「離れてよ」などという声は聞いてないと証言し、これは沖田さんの証言と一致している。

高裁ではこの携帯電話の話し相手の尋問が行われ、沖田さんの証言が裏付けられた。


判決によると
「痴漢行為をしたと言う被控訴人(女性)の供述の信用性には疑問があり、これを否定する控訴人(沖田さんの供述には相当程度の信用性が認められ、その他の証拠や認定事実を考慮しても、被控訴人が本件痴漢行為をしたことは認めることはできない」としつつも
「痴漢行為は存在せず、これは虚構の事実であると断定するには様々な問題点が残されており、それを認定するには十分な証拠があると言うこともできない」とした。

つまり「痴漢はしてかもしれないけど、女性がウソを言った証拠が無いじゃないか」ということです。

ので原判決の「理由は誤りであると言わなければならないが、結論においては正当であるから本件控訴は理由がないことに帰し、これを棄却すべきである」と判断したのです。

僕はこの判決を読んで、例えば理由が「利水」から「治水」に変わっても何が何でもダムを推進させようとするような官僚根性を見たような気がしました。

理由は変えようとも何が何でも結論は変えない。

女性が「この人痴漢です」と言って逮捕されても、そのウソをこちら側で100%証明しないと、女性のウソは正当化されるということです。女性や警察に立証責任はない、ということです。素晴らしきかな「疑わしきは被告人の利益へ」。

この言葉が権力側を擁護するためにある言葉だとは思いませんでした。

判決は「立証責任は被告側にある」が「(女性が嘘をついたという)不法行為の立証が尽くされたとはいない」と突然言い出しました。ちなみに控訴審では立証責任なんて一言も言ってません。「客観的な証拠は乏しいものの、被控訴人A(女性)の供述については信用性を認めることができる」ので「被控訴人Aのした本件被害申告が虚偽であるということはできない」と言って控訴を棄却しています。こういう言い方だと、女性の供述の信用性がないことを証明すれば、いいと思いますよね、普通の国語力なら。で、女性の供述の信用性が崩されたとたん、この判決です。

OK、立証責任は原告側にあります。これは通常の刑事裁判でも犯罪の立証は検察にあります。では実際の裁判ではどうなのか?完璧に立証されていなくても可能性論で有罪にされます。

横浜の河野事件で弁護団は「女性の右側をすれ違ったのに左側を触るのは不自然な格好をしないとできない」という主張に対し、裁判官は検察も女性も主張してない「まわりこめばお尻を触れる」とし有罪にしました。

岡山の山本さんの事件では「身長差25センチでお尻を触るのは無理」という主張に対して裁判官はこれまた検察も女性も主張してない「足を曲げたり、広げたり、背筋を伸ばしたり、これを組み合わせれば可能」とし有罪にしました。

西武線小林事件では医師が「膣の中に指を入れるのは病気のためかなりの激痛を伴う」という主張に対して「やってできないことはない」として有罪にしました。

さらにこの沖田さんの裁判の差し戻し前の控訴審で原告・沖田さん側の「身長差が10センチ(沖田さんの方が低い)あり股間を腰に押し付けるのは不可能」という主張に対し裁判官はこれまた誰も主張してない「背伸びをしながら接触したことも十分考えられる」とわけのわからないことをのたまわって痴漢行為はあったと認定しています。これが立証っていうのでしょうか?可能性論だけではないですか?ちゃんと質問には答えようね、そして納得いくように話そうね、子供じゃないんだから。。

では、この沖田さんの主張をこういった判決に当てはめてみようじゃないですか。

これまであげた例はどれも客観証拠はひとつもありません。有罪証拠は女性のみです。動機もありません。

沖田さんの場合、身長差により痴漢行為は不可能という客観証拠が存在します。

また携帯電話のやり取りで女性の痴漢にあったという証言を裏付けるものありません。
逆に沖田さんの証言を裏付けています。

通常の痴漢事件が女性証言だけで有罪になるのに対し、沖田さんの場合、沖田さんの無実を裏付ける証拠が沖田さんの証言のほかに二つ以上あります。


さらに痴漢があったという証拠は女性証言だけです。目撃証言も何もありません。

沖田さんが検察の立場だったら、これは間違いなく沖田さんの勝ちでしょう。

検察には完璧な立証を要求せず足りないところは可能性論や想像でフォローし有罪判決を下す。しかし個人には完璧な立証を要求する。強きを助け、弱きを挫く。日本における裁判というものが誰のためにあるかをよく理解されている裁判官です。そうです、日本の裁判というものは決して市民を守るためにあるのではなく、国を守るためにあるのです。警察が逮捕した案件で賠償なんて認めたら国の秩序が乱れてしまいます。これがこの国の姿です。今回の判決はそれをわかりやすく表してくれました。

沖田さんは判決後こう話していました。

「立証責任はこっちが負わないといけない。それが国賠の難しいところなんだ。だから僕みたいな個人が戦いを挑んでも絶対勝てない。
痴漢行為があったということはさすがに認めてないけど、ウソをついたというところまでは立証してないと言うんだ」

官僚の中の官僚、この裁判の裁判長は大橋寛明という方です。

この国の司法はもはや体をなしてないと感じます。

それでも「痴漢をしてないことは認めさせたのだから半歩前進だ」という沖田さん。これが10年間戦ってきた強さなのだなと思いました。







痴漢冤罪?の恐怖 | permalink | comments(3) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

11/26は沖田さんの差し戻し審判決の日でしたか。

11/26、私は「日弁連刑事弁護センター」主催の「目撃証言研究会」へ参加していました。
その日は神戸の強盗殺人事件、大阪高裁の逆転有罪判決、一審無罪⇒高裁無期懲役 
被告人の供述と目撃証言についての勉強会で、刑事事件での心理鑑定で有名な浜田寿美男先生が
(袴田事件・甲山事件・町田痴漢えん罪事件等)コメンテータとして参加されていました。
浜田先生の「自白の心理学」は、えん罪事件を支援するものにとって大変、参考になります。

また、弁護士の庭山先生も参加されていました。私は、今年4月に「えん罪事件と裁判員制度を考える会」
で庭山先生の講演をきいた事があります。
その時は、狭山事件の石川さん、布川事件の桜井さん、富山氷見国賠訴訟原告柳原さん、
まだ、釈放されていなかった足利事件菅家さんの支援者西巻さんも参加していました。
余談になりましたが、それで、
庭山先生は、現在、ある痴漢えん罪の再審の弁護団長をなさってるそうです。痴漢事件は被害者女性
の供述のみで有罪となり、証拠といえるものがないので、ご苦労しているとのお話でした。

しかし庭山先生曰く、「防衛医科大学名倉教授の最高裁逆転無罪の判決は、被害者女性の供述のみでは
有罪にすべきではないとする判例であり、希望が少し見えましたね」といっておられました。
が、現実はまったく進歩していないのですね。

被害者女性は後に引けない状態です。自分自身の言動で大事になってしまった、
痴漢被害にあったと主張する事以外に道はないのです。

沖田さんのケースには客観的証拠があるにもかかわらず、被害者女性の虚偽申告は
認めない。

いわぢろうさんの記事どおり、

「検察には完璧な立証を要求せず足りないところは可能性論や想像でフォローし有罪判決を下す。
しかし個人には完璧な立証を要求する。」

警察・険察・裁判官の連帯は想像以上に強く深い事を再認識しました。




kitori | 2009/11/27 2:25 PM
kitoriさま

いつもコメントありがとうございます。庭山弁護士の件は僕も取材しています。
彼は冤罪を訴えながら収監され、刑務所の中でも、それを曲げませんでした。そのため仮釈放もなく満期で出所しました。

「いまどきやくざやサンでも満期出所なんかない」と言われたそうです。

神戸の事件は僕は知りませんでした。今度教えてください。
いわぢろう | 2009/11/28 8:25 AM
庭山弁護士は、小泉さんの弁護団長でしたか・・・。知りませんでした。
今年4月の「えん罪事件と裁判員制度を考える会」ではM氏は癌の手術で執行延期中だったので、飛びいりでえん罪を訴える時間を頂き、庭山弁護士には「真実に壁あつくとも」をお渡ししました。
M氏も満期出所を覚悟しています。
ご家族、支援者はなによりもM氏の癌再発を心配しています。刑務所は、主治医のいる東京都内の病院での検診は出来ないと言っています。
「受刑者処遇法第40条」には指名医制度について書かれています。M氏の主治医も2010年2月に主治医が検診をするために予約も入れています。
「受刑者処遇法」も法律として飾ってあるだけなのでしょうか?

小泉さんの再審は、痴漢えん罪事件にとって大きな前進となります。
再審の実現を心から願っています。
kitori | 2009/11/29 10:21 AM
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